宇宙産業とサステナビリティ：バイオ燃料のロケットエンジン開発

地球環境にやさしく且つ地域循環型のサプライチェーン構築に向け、家畜ふん尿から製造した液化バイオメタン（Liquid Biomethane：以下LBM）を燃料としたロケットの開発が進んでおり、そこでの貢献事例を紹介します。

技術・製品・サービス環境・エコ・安全対策　パートナーシップ・共生・地域貢献

貢献する主なSDGs（持続可能な開発目標）

宇宙とサステナビリティとフォトロン

昨今、サステナビリティの観点からも「宇宙」への注目度は拡大しており、それにともない「宇宙産業」も多くのスタートアップ企業や他業種からの参入など更なる盛り上がりを見せています。

フォトロンでは、以前より宇宙産業向けにハイスピードカメラの販売をしておりましたが、より幅広く支援をしていくため、インターステラテクノロジズ株式会社の「みんなのロケットパートナーズ」（みんロケ）に参画。「宇宙産業を日本の新たな産業に。」の旗印のもと、インターステラテクノロジズ社との相互協力で宇宙産業の更なる成長と発展に貢献し、誰もが宇宙に手が届く未来を共に創造してまいりました。

エンジン燃焼器単体試験の可視化撮影

今回フォトロンでは、インターステラテクノロジズ社の小型人工衛星打上げロケット「ZERO」のエンジン燃焼器単体試験の可視化をサポートしました。

LBMを燃料とした燃焼試験の「燃焼挙動可視化」を高感度ハイスピードカメラで実施し、温度計測を赤外線ハイスピードカメラで実施。高感度ハイスピードカメラでは燃焼挙動を1,000fpsで可視化し、赤外線ハイスピードカメラでは今後の開発に必要な温度分布データを取得しました。

小型人工衛星打上げロケットZEROエンジン燃焼器単体試験

今回の主な取り組み

2023年12月に北海道大樹町の宇宙港「北海道スペースポート（HOSPO）」内「Launch Complex-0（LC-0）」にて、小型人工衛星打上げロケット「ZERO」のエンジン「COSMOS（コスモス）」の燃焼器単体試験のハイスピードカメラ及び赤外線ハイスピードカメラによる可視化をサポート。

＜概要＞

高感度ハイスピードカメラによるスローモーション撮影および赤外線ハイスピードカメラを使用した、受託撮影と受託温度計測をおこないました。

＜実施内容＞

インターステラテクノロジズの管制室から、「北海道スペースポート（HOSPO）」内「Launch Complex-0（LC-0）」に設置したカメラの遠隔リモート制御を実施。

＜ポイント＞

ハイスピードカメラ本体に加え、撮影に必要なレンズ、三脚、ケーブル、制御PCなどを一式準備し、セッティングから解析結果のお渡しまでを受託解析サービスとしてワンパッケージでご提供しました。

高感度ハイスピードカメラ（左）と赤外線ハイスピードカメラ（右）の撮影画像一部抜粋

環境とハイスピードカメラ

ハイスピードカメラは、目にも止まらない高速現象を撮影するための機材です。昨今の撮影事例では「環境に配慮した事例」が非常に多くなっています。宇宙産業でも、より一層環境に配慮した燃料・材料の研究・開発が必要とされており、当社もハイスピードカメラという機材でその研究・開発に貢献していく所存です。

補足：LBM燃料に関して

一般的な液体燃料ロケットは、液体の燃料（液化水素や液化メタンなど）と酸化剤（液化酸素）をタンクに貯蔵し、それをエンジンの燃焼室で適宜混合して燃焼させ推力を発生させます。燃料である液化メタンは、性能・扱いの容易さ・入手簡便性・環境性などに優れていますが、一方で、ロケット燃料にするには“不純物を含まない高純度メタンが必要”であるため、調達方法の対策が必要です。
今回の実験でロケット燃料として使用するLBMは、バイオガスの主成分であるメタンを分離・精製し、極低温（約-160℃）で液化したもので、ロケット燃料として使用される高純度メタンと同等の高純度（99%以上）を誇ります。
インターステラテクノロジズ社が開発するロケット「ZERO」は、ロケット燃料に家畜ふん尿由来のカーボンニュートラルエネルギーであるLBMを使用することで地球環境にやさしく、さらに、ふん尿も地元の牧場で出たものを使い消費することで地域循環型のサプライチェーンを構築しています。