内燃機関における可視化試験および解析例の紹介
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「エンジン燃焼試験・解析」において、近年の高熱効率化・低エミッション化、ガソリン代替燃料の適合へ向けた様々な取り組みがある中で、燃焼状態や筒内現象の視覚的な把握は非常に重要な要素です。今回は弊社ハイスピードカメラユーザー様の(千葉大学・森吉/窪山研究室/SERC様)の撮影・解析事例をご紹介します。
事例紹介1:可視化エンジンにおける燃焼可視化
4ストロークのエンジンでは、吸気⇒圧縮⇒膨張⇒排気の4行程を連続して行っており、吸気で燃料・空気の混合気を吸い込み、圧縮で燃焼室圧力を上げ、点火プラグにより火を点け燃焼(膨張)させ、排気行程で燃焼後のガスをエンジン外へと排出します。一定回転しているエンジンでも燃焼の様子はサイクル毎に変化しますが、これを「燃焼サイクル変動」と呼びます。燃焼サイクル変動は燃費やドライバビリティ悪化に繋がるため、内燃機関の解決すべき重要課題の一つです。
可視化エンジンでは、石英のシリンダの他に、ピストン冠面にサファイアの窓があるため、燃焼室内の様子を横から+下から観察することができ,PIVやLIFといったレーザ計測を行うことも可能です。FASTCAM Nova S16とNova S20をサイド/ボトム両方に設置することで、同時に二方向の火炎画像を撮影でき、3次元的な火炎構造の把握に繋がります。また、サイド/ボトムから火炎伝播の様子を見ると、サイクル毎に火炎伝播方向や構造は3次元的に変動しており、これらが出力の変動やエンジン振動に繋がることが分かります。
PIV(Particle Image Velocimetry)
シート状のレーザー光源を用いて、粒子や煙、またはオイルミストなどをトレーサーとしてその動きをカメラで撮影し、トレーサーの疎密な模様がどのように動くかを可視化して追跡する手法です。
LIF(Laser Induced Fluorescence)
PLIF(LIF)では、蛍光剤という特殊な薬品を燃料(イソオクタン)に混ぜ込み一緒に噴射~混合させ、その混合気に紫外レーザ(Nd:YAGレーザの第四高調波)を照射することで、蛍光剤が光る≒燃料が光るため、その光(蛍光)を撮影することで燃料濃度分布を可視化する手法です。ただし、蛍光はとても微弱なためイメージインテンシファイアで増幅させて撮影する必要があります。
ランダムリセットトリガ
通常カメラ内部の撮影タイミング信号はトリガと独立しているため、トリガ入力に対して最大1コマ弱の撮影タイミングのズレが生じます。このモードではトリガ入力のタイミングで撮影タイミング信号をリセットすることで、より正確に撮影タイミングを合わせることが可能です。
事例紹介2:可視化エンジンにおけるガス流動計測
燃焼サイクル変動を引き起こす要因の一つとして、筒内ガス流動のサイクル変動が挙げられるます。ガス流動はPIV法により計測することが可能です。粒子のMie散乱光パターンは高感度カメラが必要なので、SA-X2モノクロカメラで撮影しました。
フレームストラドリング
カメラのシャッターを1/Frameで動作させた場合、理想的には1フレーム内すべてで露光していることになりますが、センサーのリセット期間が必要となりわずかに露光できない期間(デッドタイム)が存在します。この期間はカメラの機種によりますが、0.5~3usecほどと極短い期間です。この前後で光を入れることにより、本来は高速+低解像度で撮影するものを、擬似的に超高速かつ高解像度で撮影する手法となります。基本は2枚=1セットのデータとなります。
事例紹介3:可視化エンジンにおける燃焼可視化+ガス流動計測
3台のカメラ(SA-X、SA-X2、Nova S16)を用い、燃焼可視化(サイドビュー) + ガス流動計測(2断面PIV:サイド+ボトムビュー)を同時に行った事例です。
3台のカメラのディレイを互いに干渉しないように設定します。火炎伝播へ影響を及ぼす3次元的な流れ構造を2方向同時PIVから捉えることができます。
事例紹介4:実機エンジンにおけるエンドスコープを用いた燃焼可視化
放電路や火炎の自発光撮影ではSA-X2(モノクロ)を用い、CO2の撮影では高速IRカメラX6900sc(FLIR社)を使用し、バンドパスフィルタによりCO2の発光波長4200 nm付近を撮影します。
希薄燃焼試験なので初期火炎の自発光は暗く可視化できていませんが、CO2は可視化できており、そこに確実に火炎(既燃ガス)があることが分かります。
燃焼が遅いサイクルでは放電路の伸びが悪く、CO2もプラグやペントルーフ付近に分布し、壁からの熱損失の影響を受けたと考えられます。燃焼が早いサイクルでは放電路の伸びが良く、CO2分布も早い段階でプラグから遠ざかるため、熱損失の影響が少なく火炎伝播が促進されます。
事例紹介5:RCEMを用いたHCCI燃焼の可視化
RCEMでは、エアタンクに溜めた圧縮空気をエアシリンダへ急速に流し込むことで、ドライブカムが水平方向へ射出され、カムの形状に沿ってピストンが上下し、4ストローク内燃機関の1/2サイクル(圧縮、膨張行程)の駆動を模擬することができるので、燃焼初期条件の設定が通常のエンジンよりも容易です。
「流動無し」と「強タンブル条件」でHCCI燃焼を行うと、流動が無い条件では瞬間的に全域自着火してしまいますが、流動が強い≒圧縮端での乱れが強い条件では局所的に徐々に自着火するため、圧力勾配を緩やかにできエンジンへのダメージを低減することができます。
事例紹介6:RCEMを用いたディーゼル燃焼の二色法解析
カラーカメラの撮影画像のRGBからRとGの輝度値と黒体放射を計測した校正値を用いることで火炎温度とKL値(煤濃度と燃焼場の厚みの積)を算出することができます。
解析ソフトウェア…Thermera-HSを使用/黒体放射の校正データ…Photronで計測
事例紹介7:エンジン吸気管内の燃料付着の可視化
冷間始動~暖機過程において、吸気ポートやピストン壁面上に燃料液膜が形成され、それらが原因で未燃HC排出、PMの生成や潤滑油希釈が発生します。そこで、明治大学理工学部・ミクロ熱工学研究室で開発された小型液膜センサの性能評価を行いました。可視化可能な吸気管に液膜センサを取り付け、センサ表面の燃料付着状況をカメラで可視化しました。
噴射開始から0.5秒までの撮影画像とセンサ出力を比較すると、8サイクル辺りでセンサ表面の燃料被覆率がセンサ面積の60%以上になるとセンサ出力は一定値になることが分かりました。
事例紹介8:定容容器を用いたメタン改質ガス燃焼可視化
天然ガスを用いた内燃機関の課題である未燃メタン排出。これを解決する手段として低温プラズマを用いたメタンの改質技術の提案を行いました。
本計測では低温プラズマをメタンに付与し、その改質ガスを定容容器で燃焼させて性能を比較しました。高圧パルス電源と石英管(誘電体)を用い、石英管内部に誘電体バリア放電を行うことで石英管内部を通過するメタンにプラズマを付与し、メタン →水素や高級炭化水素へと改質しました。
Normalのメタン100%ガスの燃焼に対し、プラズマを付与し改質したガス(Reformed)には水素やエタンが含まれているため燃焼速度が速く、容器内圧力や熱発生率の立ち上がりも早いです。また、改質ガスの燃焼では壁面近くまで火炎が進行していることがわかり、未燃メタン低減が達成できていることが分かります。
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