「リアルデジタルツイン」推進のためにフォトロンのハイスピードカメラは無くてはならないツール
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日本精工株式会社 様
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ハイスピードカメラ FASTCAM Nova をご活用頂いている
日本精工株式会社 技術開発本部 千布 剛敏 様、吉川 武文 様、武藤 圭祐 様に
インタビューをした「『リアルデジタルツイン』推進のためにフォトロンの
ハイスピードカメラは無くてはならないツール」の記事をご紹介します。
ハイスピードカメラでカラクリを解明し、エンジニアの自由な発想を促す
当社は1916年に日本初のベアリング(軸受)メーカーとして創立され、100年以上にわたって、多種多様なベアリングや自動車部品、精機製品など、さまざまな革新的製品や技術を生み出し、世界の産業発展を支えてきました。ベアリングは自動車や産業機械など、あらゆる機械の回転部分で摩擦を低減するために用いられますが、長寿命で滑らかな回転を実現する当社のベアリングはお客様に高く評価され、シェア国内1位、世界3位を誇ります。ベアリングのさらなる長寿命化や低摩擦化にはさまざまな技術課題がありますが、当社はこれを蓄積したトライボロジーの技術にデジタルの技術を融合することで解決し、社会に新しい価値を提供することを使命として掲げ、「リアルデジタルツイン」と呼ぶ取組みを始めました。

データを元に仮想空間でリアルを再現するのが一般的な「デジタルツイン」。そこから一歩踏み込み、実際の現象(リアル)を実験で再現し、洞察することで詳細に現象を把握する。そして、そのカラクリの仮説を立ててデジタル上にモデル化することで問題の本質を理解し、新たなソリューションにつなげる、これが当社の考える「リアルデジタルツイン」です。この考えやノウハウを全社の技術部門に浸透させるため、2021年2月に設計の心臓部である藤沢技術開発センターの技術開発本部にデジタルツイン推進室を発足。ベアリングの解析、社内設計ツールの開発といったシミュレーションから、音や振動などの現象が起こった際の原因究明まで、部署の垣根を越えて多様なプロジェクトにあたっています。
効率重視の反省から生まれた「リアルデジタルツイン」への取り組み
「リアルデジタルツイン」への取り組みは、効率重視の時代が長く続き、技術継承、情報共有が難しくなってきていたことへの危機感から始まりました。効率を重視するあまり、シミュレーションに強い技術者はデジタルに、測定や分析に強い者はリアルに特化していくといった分業・細分化が進んでいたのです。過去のプロジェクトに関する資料も各部門で管理していたため、社内で培った膨大な情報やノウハウにアクセスすることが難しくなっていました。また、当社では新しい開発に臨む際にソフトウェアなど必要なツールを用意し、実験設備を導入して使いこなすまでに年単位を要することがありました。多様化する顧客のニーズに早急に応えるためには、開発の過程で起こる諸々の現象の原因を短期間で究明できるようにしなくてはなりません。組織構築は急務でした。
デジタルツイン推進室では、まず社内の全技術センターに「リアルデジタルツイン」を推進するメンバーを選定し、デジタルツイン推進室に兼務で入ってもらう形で活動を始めました。推進メンバーがセンター毎の課題を整理し、専任メンバーと共有しながら課題解決を行う横断的な取り組みを進めています。また、要望があればメンターを設定し、エンジニアが現場で抱えるテーマを一緒に考え、業務が効率的に行えるようツールの使い方も教え、エンジニアの能力アップを目指しています。
EV対応で進むベアリングの高速化
併せてエンジニアがより創造的な開発に専念できるように開発現場におけるツールの整備も進めました。その一つとして、自動車用ベアリングの開発におけるハイスピードカメラの導入が挙げられます。現在、自動車用ベアリングの開発現場は、EV(電気自動車)化への対応が急務となっています。EVの主要部品である駆動用モータを小さくすると車体が軽くなり、少ない電力で走ることができますが、モータを小さくすると従来のモータと同じ回転数のままではパワーが落ちてしまいます。パワーを補うためには回転速度を上げなくてはなりません。そのため、モータの中に使われるベアリングなどの部品は小さく軽くするだけでなく、高速回転に対応することが求められています。高速化を目指すなかで問題が起きた際に現象を可視化するツールとして、フォトロンのハイスピードカメラ『FASTCAM Nova S16 モノクロ』を導入しました。
これまでも開発現場でハイスピードカメラを使っていましたが、EV化で従来の2~3倍の高速回転に耐えうるベアリングが要求されるようになり、より高速・高画質で撮影できるカメラが必要でした。ハイスピードカメラにはイメージセンサの使用範囲を狭める(解像度を落とす)ことで、撮影速度を高める機能が備わっていますが、当時ほとんどのメーカーのハイスピードカメラが、撮影したい速度では、縦の解像度が足りず長方形の画角での撮影だったのに対して、フォトロン製品は唯一、縦、横ともに高精度の画素数を確保でき、正方形の画角での撮影に対応し、細かいところまでクリアに見ることができました。ベアリングという円形の製品を開発する当社にとって、一番の決め手となりました。プレゼン資料を作成する際も、2つの動画を並べたりすることが多く、正方形だと並べやすいので重宝しています。
また、製品導入前の現場での実機デモの際に、営業担当の方がやりたい撮影に対して、アングルから実際に撮影できるところまで調整してくれて、間違いなく撮影できるという安心感があったのも購入に至った決め手の一つです。
逆転の発想で軽量化・高速化に成功
ベアリングは、リング状の軌道輪の間を転がる転動体と、複数の転動体が接触しないように一定の間隔に保つ保持器というリング状の部品、シールなどから構成されています。

[画像提供]日本精工株式会社様
従来の2~3倍の高速回転を目指すものの、回転速度を高めると遠心力によって保持器が変形し、他部品と接触し破損してしまう事態が続きました。
そのため、長寿命で変形しにくい、保持器の開発に着手。ハイスピードカメラを用いて、保持器単体高速試験を実施し、シミュレーションと比較、妥当性の検証、また同じくハイスピードカメラを用いてベアリング内の保持器の挙動可視化試験を実施し、試作品の動きを撮影した映像を、転動体が動かないように動画編集ソフトで固定したところ、保持器が振れ回りながら傾くことでシールと接触していることがわかりました。そこで、保持器の寸法を見直すことで振れ回りを抑え、遠心力の影響をさらに受けにくくするため、本体を可能な限り薄くしました。従来製品で遠心力に耐えうるよう分厚く設計していたのと真逆の発想です。結果、材料を7割削減したうえで軽量化・高速化に成功しました。


ベアリングは製造過程の焼き入れで強度を生み出しているのですが、冷却方法と熱処理変形の関係性を解明する熱処理実験においてもフォトロンのハイスピードカメラを活用しています。ほかにもグリースがミスト状に飛び散っている状態を捉えるなど、基礎研究分野でこれまで解明しきれていなかった現象を捉えて問題個所を突き止められるようになり、今後の研究開発への確かな手応えを感じています。

「リアルデジタルツイン」でエンジニアの能力向上、環境にやさしい製品開発を目指す
デジタル推進室発足から3年が経ち、いまでは社内SNSでわからないことがあればその事柄に精通している人に聞くこともできるようになり、部署を問わず過去の膨大なプロジェクト情報にもアクセスできる体制が整いつつあります。
自動車分野のみならず、掃除機といった家電製品をはじめ、さまざまな分野で商品の小型化のニーズが高まるにつれ、ベアリングの高速回転化へのニーズは加速し続けています。従来製品よりもさらに高品質・高精度な製品を生み出すために、フォトロンのハイスピードカメラは、いまや当社にとってなくてはならないツールです。全社で情報共有しながら、現場で起こった現象をつぶさに観察し、エンジニアが自由に解決策を発想し、既成概念まで打ち破るような新たな解決策に結び付ける――これが、当社の目指す「リアルデジタルツイン」です。一筋縄ではいきませんが、さらに「リアルデジタルツイン」を加速させ、エンジニアの能力向上、ひいては環境にやさしい製品開発を通じて、環境保全にも貢献していくことを目指します。
インタビュー:
千布 剛敏 様、吉川 武文 様、武藤 圭祐 様
日本精工株式会社 技術開発本部
デジタルツイン推進室 グループマネジャー
千布 剛敏 様
プロジェクト2 副主務
吉川 武文 様
デジタルツイン推進室 副主務
武藤 圭祐 様

※ この記事は2024年2月取材時の情報です
撮影事例
[画像提供]日本精工株式会社様
軸受内保持器挙動可視化試験
ベアリングの熱処理実験観察
製品紹介
FASTCAM Nova Sシリーズ
「FASTCAM Nova S シリーズ」は、120×120×217.2 mm、質量 3.3kg という小型軽量密閉筐体でありながら、1024×992 ピクセルで 20,000 コマ/秒、512×512 ピクセルで 62,500 コマ/秒、最高 1,100,000 コマ/秒という撮影速度を実現したハイスピードカメラ(高速度カメラ)です。

モノクロ ISO 64,000 / カラー ISO 16,000 という超高感度を実現しており、燃焼、切削、溶接など様々な分野で活用いただけます。
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