高速世界の物理現象を可視化し開発プロセスに革新を起こす

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トーヨーエイテック株式会社 様

ハイスピードカメラ FASTCAM Nova をご活用頂いている
トーヨーエイテック株式会社 自動車部品開発技術部 自動車部品開発課
有川 俊一 様にインタビューした「高速世界の物理現象を可視化し開発プロセスに革新を起こす」の記事をご紹介します。

目次

理想を描き技術開発に取り組む

当社は創業の工作機械事業を主軸とし、自動車部品事業と表面処理事業の3つの事業部からなる企業です。自動車部品事業部では、オートマチックトランスミッション用のオイルポンプとフューエルレールを主力商品として生産しており、自動車部品開発課では、それらの次世代商品の開発設計、機能/性能検証、品質評価など、開発・試作段階から本格量産に至るまでの商品化に向けた全領域をカバーする体制を整えています。

オイルポンプはATF(オートマチックトランスミッション用オイル)に圧力を与え、油圧アクチュエータやトルクコンバーターへの送油・各部品の潤滑を行う自動車部品です。高効率かつ、低振動なオイルポンプの実現に向けて、課題に取り組んでいます。フューエルレールは、燃料噴射装置システムの基幹部品の1つで、高圧に圧縮されたガソリン等の燃料をインジェクター(燃料噴射装置)へ均等に分配供給する機能があります。高耐久信頼性かつ軽量・コンパクトという、相反する特性を両立させたフューエルレールを目指して開発しています。このように、当社は理想の商品を目指して技術開発に取り組んでいます。

高強度化と軽量化を両立させたフューエルレールで環境問題に貢献

私はフューエルレールの開発を担当しており、環境規制の社会動向と自動車メーカーの技術動向を踏まえて、フューエルレールへの技術要求を先読みした商品や技術を開発することが、最も重要な責務と認識しています。世界各国の環境規制は年々厳しくなるとされており、液体燃料をより高圧で噴射すると燃料噴霧が微粒化して排気ガス中の有害物質の発生が抑制されると言われていることから、自動車メーカーは燃料噴射圧力を将来引き上げると予測し、高燃圧化対応と軽量化を最高水準で両立した「理想のフューエルレール」の開発に取り組んできました。

高燃圧化の影響として、燃料噴射反力増大により締結ボルトへの負荷が増大することと、圧力振幅増大によりフューエルレールの振動変位が増大することが予想されるため、適切な剛性で形状設計し、これらを抑制するという技術課題がありました。CAEで全体剛性を最適設計するためには高速で内圧が変動する際のフューエルレールの変位挙動と、締結ボルトの変位挙動を定量把握する計測技術が必要でした。

現有技術の、ひずみゲージや加速度ピックアップを使った計測は、あくまでピンポイントの計測で、全体挙動を捉えることが困難でした。そこで、強度/NVHの決定要素であるひずみ/変位を3次元的に捉えることができる、2台のハイスピードカメラ画像を使った3次元※1DIC技術の導入を検討しました。

※1:デジタル画像相関法(Digital Image Correlation)の略で、デジタルカメラで撮影した変形前後の画像を使用し、ひずみを非接触で可視化、解析する手法

誰でも簡単に撮影条件設定ができ、高速現象の可視化が驚くほど身近に

フォトロン製品は2019年からオイルポンプでの高速現象を可視化するためにデモ計測やレンタルサービスを利用していたので、ハイスピードカメラの有効性やフォトロンのソリューション提案力の高さは実感しておりましたが、導入にあたっては、複数メーカーの製品を比較検討しました。選定の際に重視したポイントは2つあります。

1つ目は、「高速のひずみ/変位現象を十分な分解能かつ、少ない計測誤差で解析可能な画像を撮影できるか」です。カタログスペック上は同等なカメラを比較しましたが、実際に撮影した画像を見ると、どのカメラを選べばよいかは明白でした。高精度で画像解析するために重要とされている、低ノイズでコントラストがはっきりした画像の取得において、最も優れていたのがフォトロンのカメラでした。

2つ目は、「誰でも簡単に高品質な画像を撮影することができるか」です。高価な機器ですし、映像のプロフェッショナルの方々が使っている印象を持っていて、取扱いが難しそうなイメージがありました。実際に触れてみると、カメラを制御するためのソフトウェアUIが秀逸で、シンプルな操作性かつ、撮影サポート機能も充実しておりとても使いやすいと感じました。また、2台のカメラをケーブルで繋ぐだけで難しい配線は必要無く簡単に同期撮影ができるのも魅力でした。

この2つのポイントから、3次元DICでひずみ/変位を精度良く捉えるという目的を達成でき、誰でも簡単に扱えるフォトロンのハイスピードカメラを選定しました。

補助金制度を活用して自己負担額2分の1で導入

ハイスピードカメラは決して安価な機器ではないので、レンタルサービスの利用や外部機関への撮影委託で対応されるケースが多いのではないかと思います。初期導入コストが抑えられ、必要な頻度・用途に合わせて利用できるメリットはありますが、技術開発競争の渦中にいる我々としては、捉えたい現象が出てきた際、即座に撮影できるように、カメラを購入して手元に置いておきたいと常々感じていました。

タイミングよく、高燃圧化対応フューエルレールの実用化開発を計画していた時期に「ものづくり価値創出支援補助金」の公募があり、補助金の交付を受けることができたため、自己負担額2分の1でハイスピードカメラを導入することができました。

補助金の交付を受けることで、カメラ購入のハードルはぐっと下がりますので、活用できる補助金制度はないか検討されることをお勧めします。

新たな付加価値商品を生み出すために、大切にしている5つの要素

新しい製品を開発する際にはさまざまな問題が出てきます。それらの問題を解決に導くために5つの要素を大事にしています。

① 問題となる物理現象を見るための「可視化技術」
② 物理現象の挙動を計る「計測技術」
③ 物理現象を机上で再現する「CAE技術」
④ 問題のメカニズムを特定する「品質工学」
⑤ 解決策の最適設計をする

[画像提供] トーヨーエイテック株式会社様

近年、自動車業界の設計開発プロセスはCAEによる机上シミュレーションを最大限活用して効率よく進める手法である「モデルベース開発」への取組みが推し進められており、当社も例外ではありません。

机上検討を高精度で行えるモデルを確立するためには、現象のメカニズムを徹底的に理解することが必要です。そして、メカニズム解明における一番ピンは、物理現象を可視化し定量計測する技術の獲得であると考えています。

百聞は一見に如かず、ハイスピードカメラ導入で技術レベルは次のステージへ

ハイスピードカメラ導入により、部品全体の3次元挙動を定量把握できるようになり、さらには肉眼で捉えられなかった高速現象を可視化できたことでメカニズム解明が進み、CAE技術を飛躍的に向上させることができました。いくつか事例を紹介します。

まずは、オイルポンプ回転中のポンプ室内に空気が発生する様子と、その後の挙動を可視化した事例です。これにより、ポンプ室内の圧力変動のメカニズムが明らかになりました。複雑な物理現象である気液二相流(気相と液相が混在した流れ)の流動様式を、精度よくシミュレーションできるCAEモデルが確立でき、最適設計に繋げています。

次に、フューエルレールの内部圧力が変動した際の3D変位/ひずみを計測した事例です。この事例では、2台のハイスピードカメラで同期撮影した画像をDICで解析して3次元挙動を定量的に評価しています。内圧の測定データとレール挙動を同期させて分析することができ、CAEで予測していたレール挙動とよく一致することが確認できました。おかげさまで、高精度でレール剛性最適化の机上検討ができ、高燃圧化対応と軽量化を最高水準で両立した「理想のフューエルレール」が実現できました。

これらの事例のように、ハイスピードカメラによる可視化技術/画像解析技術が、当社の開発プロセスに大きな革新をもたらしています。

ハイスピードカメラが切り拓くテクノロジーの未来を見つめる

今後は、ハイスピードカメラ撮影や画像解析の適用範囲を、技術開発領域だけでなく生産技術領域にも広げることで、量産準備プロセス全体の効率化も図っていきたいと考えています。具体的には、ハイスピードカメラとX線透過装置を組み合わせた技術で、フューエルレールをろう付けする際のレール内部のろう材挙動可視化に挑戦してみたいと思っています。

画像解析技術の進化の勢いはすさまじいので、AIやVRの技術と組み合わせるとどんなことができるか?などの可能性を想像するとワクワクします。今後もフォトロンには予想を超えるソリューションを提供いただけることを期待しています。

インタビュー:有川 俊一 様

トーヨーエイテック株式会社
自動車部品開発技術部 自動車部品開発課
有川 俊一 様


※ この記事は2023年10月取材時の情報です

製品紹介

FASTCAM Nova Sシリーズ

「FASTCAM Nova S シリーズ」は、120×120×217.2 mm、質量 3.3kg という小型軽量密閉筐体でありながら、1024×992 ピクセルで 20,000 コマ/秒、512×512 ピクセルで 62,500 コマ/秒、最高 1,100,000 コマ/秒という撮影速度を実現したハイスピードカメラ(高速度カメラ)です。

モノクロ ISO 64,000 / カラー ISO 16,000 という超高感度を実現しており、燃焼、切削、溶接など様々な分野で活用いただけます。


FASTCAMで撮影した様々なひずみ解析事例(DIC)

ポンプのひずみ解析(DIC) [画像提供] トーヨーエイテック株式会社様

レールのひずみ解析(DIC) [画像提供] トーヨーエイテック株式会社様

エアバッグ作動試験のひずみ解析(DIC)

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