『HARBOR』が支えるスカパーJSATの素材搬入インフラ改革 設備投資と運用負荷を抑え、放送ワークフローの効率化を推進
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スカパーJSAT株式会社 様
月間6,000〜7,000本、1日平均約250本。スカパーJSATが提供する多チャンネルプレイアウトサービスには、膨大な数の映像ファイルが日々搬入されている。現在では放送業界に広く浸透したファイルベースのネットワーク搬入だが、その定着の背景には、従来のインジェストフローが抱えていた設備・運用面の課題を見極め、業務プロセスの変革に取り組んできた現場の歩みがある。本稿では、同社のインフラ運用を支えてきた前中隆氏の視点から、フォトロンの『HARBOR』導入によるワークフロー改革の軌跡を紹介する。
ポイント
- 事業者の不安を解消できる運用面での安心感から『HARBOR』を導入
- 空気のような安定稼働の実績でネットワーク完全移行を後押しして設備の大幅なスリム化を実現
- 事業者側の運用とワークフローの理解を伴ったフォトロンの現場対応力で安定した搬入基盤を維持
インジェスト設備の複雑化と、運用負荷の可視化
2012年当時、同社ではプレイアウトシステム内部のファイル化が進む一方で、外部から搬入される素材をシステムへ取り込むインジェスト工程に課題が残っていた。多様なメディアやフォーマットに対応するため、設備は複雑化し、運用・保守の負荷も高まりつつあった。
「当時、搬入される素材はテープ(HDCAM等)が中心で、システム内部へ取り込むワークフローが前提となっていました。DV、HDCAM、XDCAMなど、フォーマットごとに専用のカートマシーンを多数保有しており、それらを制御するシステムや保守体制を維持するだけでも、大きな手間とコストがかかっていました」
こうした課題を受け、前中氏は青海放送センターにおいて、フレッツ回線を活用した自前のネットワーク搬入システムを試験的に構築した。しかし、複数の仕組みを組み合わせた構成では、運用保守の面で新たな課題も見えてきた。
「構想当初は小規模に始める必要があり、適切なサービスも見つからなかったため、複数のシステムを組み合わせた構成でスタートしました。そのため、『ファイル搬入に時間がかかる』と連絡を受けても、どこがボトルネックになっているのかを切り分けるのが非常に難しかったのです。技術担当者にかかる“見えない管理コストと手間”が、大きな課題として浮き彫りになりました」
ワンストップで支える搬入基盤と、移行を後押しした安心感
自前構築で得た知見は、スカパー東京メディアセンターへの移転に伴うシステム更新において、インジェストフローを見直す大きな契機となった。管理負荷を抑え、安定したネットワーク搬入基盤を実現するため、新たなシステムの中核として採用されたのが、フォトロンの『HARBOR』だった。
「ファイルの送受信から回線まで、まさにワンストップで提供されるサービスでした。システム管理の観点からも、『これなら安心して任せられる』と感じられたことが大きな魅力でした」
ネットワーク搬入への移行を進めるには、各事業者に運用変更を受け入れてもらう必要がある。前中氏が重視したのは、単なる伝送性能にとどまらず、事業者の不安を解消できる運用面での安心感だった。
「クローズドなネットワークでセキュリティが確保されていることに加え、万が一ネットワークが停止しても、都内であればハードディスクによる代替納品ができる。エンドユーザー様に対して『ここまでリスクヘッジを考えています』と説明できたことは、ネットワークでのファイル搬入を推進する上で非常に重要でした」
安定稼働の実績を背景に、完全ネットワーク搬入へ移行
導入後、『HARBOR』は「動いて当たり前」のインフラとして現場に定着していった。5年以上にわたる安定稼働の実績を背景に、前中氏は2019年、マスター設備の更新に合わせて大きな判断を行う。従来のカートマシーン等を前提としたインジェスト設備への投資を見直し、完全ネットワーク搬入へ移行する方針を打ち出したのである。
「インフラは、トラブルがないことこそが最大の評価です。『HARBOR』はまさに空気のように安定稼働してくれました。だからこそ、2019年にはカートマシーンベースのインジェスト設備への投資を見直し、全面的にネットワーク搬入へ移行できたのです」
安定した搬入基盤を維持する上で、前中氏が高く評価するのがフォトロンの現場対応力である。事業者側の運用とスカパーJSAT側のワークフローを理解した上で、両者をつなぐ役割を担った点が、移行を支える大きな力となった。
「フォトロンさんは、事業者様が保有する営放システム(営業放送システム)や、当社が保有するワークフロー管理システムの仕様を深く理解し、両者の橋渡し役を担ってくれました。単なるベンダーにとどまらず、コンサルタント的な役割まで担っていただいたおかげで、完全ファイル化と設備の大幅なスリム化を実現できました」
放送業界のワークフロー変革へ広がるネットワーク搬入
スカパーJSATで進められたネットワーク搬入の取り組みは、CS業界にとどまらず、地上波キー局やアニメ制作会社などにも広がりを見せている。個社の業務効率化から始まった取り組みは、放送・映像制作に関わるサプライチェーン全体のワークフロー変革にもつながっている。
「当初、地上波系のCS局様に提案しても怪訝な反応をされることがありましたが、今では逆に『スカパーのプレイアウトへの素材納品はHARBORですよね』と言われるようになりました。業界のネットワーク搬入基盤として定着してきたと感じています。CS業界全体の効率化が進み、『とうとうここまで来たか』と非常に感慨深いです。これほどの規模のサービスを長く安定稼働していただいているフォトロンさんのたゆまぬ努力には、心から感謝しています」
放送業界では今後、XDCAMのサポート終了やパブリッククラウドの本格利用など、さらなる環境変化が見込まれている。こうした変化に対応しながら、事業者のワークフロー効率化をどのように支えていくか。前中氏は、今後のサービス進化への期待を次のように語る。
「今後は、変化し続ける事業者様のワークフロー効率化をさらに一段引き上げるような、プラスアルファのサービス進化にも期待しています。これからも共に取り組んでいければと思います」
(取材:2026年4月)
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