「The Damned」のカラーグレーディング、DaVinci Resolve Studioを使用して視覚的な奥行きを作成

  • Blackmagic Design

東京、日本 – 2024年11月5日 (火)

2024年カンヌ国際映画祭のある視点部門でプレミア上映され、同部門で監督賞を受賞した「The Damned」は、第49回トロント国際映画祭でも上映された。イタリアの監督兼脚本家であるロベルト・ミネルヴィニ(Roberto Minervini)氏の最新である同作は、南北戦争中の1862年が舞台となっている。西部開拓地に派遣された義勇兵の生活を描き、深い考察と見事なビジュアルが巧みに融合されている作品だ。

イタリア、トリノのImago VFXのカラリストであるナタリア・ラグセオ(Natalia Raguseo)氏は、撮影監督のカルロス・アルフォンゾ・コラル(Carlos Alfonso Corral)氏と共に、本作のビジュアルスタイルを作り上げる上で重要な役割を果たした。古典絵画とデジタルメディアを学んだラグセオ氏は、DaVinci Resolve Studioでグレーディングとフィニッシングを行い、同社のCEOであるファブリツィオ・ナスターシ(Fabrizio Nastasi)氏がマスタリングを取り仕切った。

ラージフォーマットのデジタルフィルムカメラにビンテージのTLS Canon Rangefinder単焦点レンズを取り付けて撮影した同作は、ミネルヴィニとコラル両氏のビジョンが反映されており、綿密な構図、兵士たちの長い待ち時間を強調するためのゆっくりとした物語のペース、顔の多数のクローズアップ・ショットを特徴としている。広角レンズと、ビンテージレンズからのボケにより、登場人物の表情が強調され、戦争そのものではなく、内面の葛藤を強調する臨場感あふれる雰囲気を作り出している。

「本作のカラーに関しては、過酷な環境を反映し、ありのままの経験を伝え、視聴者が主人公の内なる混乱に感情移入できるように、冷たいトーンの自然なパレットを選択しました」とラグセオ氏は語る。

「カラーワーパーやカーブなどのプライマリーおよびセカンダリー・カラーコレクションツールを使用し、トーンを微調整して苦悩を強調する独特の視覚効果を作成しました。常に見えない敵に囲まれている環境での閉塞感を強調することに重点を置き、レンズのボケを強めました」と同氏は続ける。

ミネルヴィニ氏のビジョンは、歴史的な正確さとリアルさに基づいていた。自然光のみを使用し、色、強度、方向を常に変化させ、夜明けと夕暮れ時に撮影したことで、本作がよりリアルなものとなった。

奇襲シーンは自然光を巧みに利用した良い例だと同氏は語る。「15日間にわたって撮影されたこのシーンは、ブルーアワーの美しさを捉えています。夜の深く、不安な闇に移り変わっていく光をグレーディングにより視覚的に表現しました。」

照明はショット間に一貫性を持たせるだけでなく、時間の経過に伴う自然な光の変動を強調するために意図的に選ばれたものだった。「DaVinci Resolveのプリンターライトで、カラーと露出を慎重にモニタリングし、Magic Maskを使用することで、シーン内の特定のエレメントを分離・調整できました」と同氏は続ける。

また、最後の雪のシーンは同氏の最も気に入っているシーンだという。「モンタナ州の砂漠を舞台に、部隊が分裂する様子を描いており、憂鬱な雪景色の中で立ち止まり、空を見上げる二人の主人公の顔に雪片が優しく落ちる感動的な瞬間で終わります。」

雪のシーンのグレーディングは困難が伴う。雪が周りの環境を若干異なる色で反射するからだ。「ビンテージレンズを使用したことで、複雑さが増し、独特の反射が生じました」と同氏。

DaVinci Color Transform Language(DCTL)を用いることで、同氏はより微細なカラーコントロールが行え、極めて小さなディテールに対しても調整を施すことができたため、雪の自然な反射と、草木や軍服などの周囲の要素を正確に表現できたという。

「このシーンでは、グリザイユ技法を用いることで、光と影を深く見極め、芸術的な絵画の原則を取り入れられたので、視覚的に奥行きを与えることができました」と同氏は説明する。

デジタルインターミディエイト・グレーディングは、Barcoの映写機とDaVinci Resolve Mini Panelが備え付けられた、同社のカラーグレーディングおよび5.1サウンドミックス用のスタジオにある7メートルのスクリーンで行われた。

このスタジオでは、DaVinci Resolve Studioの4K DCIデュアルリンクビデオ出力が、DeckLink 8K Proキャプチャー・再生カードからBlackmagic Videohub 40×40 12Gルーターを通して、Barcoの映写機にルーティングされている。5.1オーディオミックスには、出力がDeckLink 8K ProからDolby Digital Cinema Processor CP750にルーティングされ、2台のMini Converter SDI to Audio 4Kがスタジオの5.1システム用に信号を変換している。

「マスタリングの段階では、DaVinci Resolveを使用して、海外での配給用に4K DCIのDPXシーケンス、HDのProRes 4444、社内レビュー用のH.264など、複数のフォーマットを効率的に作成しました」とナスターシ氏は語る。

「これは、ミネルヴィニ氏のビジョンを捉えることを目的とした、技巧、創造性、テクノロジーの真の融合です」と同氏は締めくくった。

監督:ロベルト・ミネルヴィニ(Roberto Minervini)

プロデューサー:パオロ・ベンツィ(Paolo Benzi)、デニース・ピン・リー(Denise Ping Lee)、ロベルト・ミネルヴィニ、パオロ・デル・ブロッコ(Paolo Del Brocco)

撮影:カルロス・アルフォンゾ・コラル(Carlos Alfonso Corral)

制作会社:Okta Film、Pulpa Film、Rai Cinema、Michigan Films、BeTV、Shelter Prod、Stregonia、Moonduckling Films

ポストプロダクション IMAGO VFX

配給:Lucky Red(イタリア)およびLes Films du Losange(その他)

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