MetaのVRシリーズ「The Faceless Lady」、DaVinci Resolve Studioでグレーディング

  • Blackmagic Design

東京、日本 – 2024年6月6日 (木)

Blackmagic Designはこの日、ニューヨーク・ブルックリンのポストプロダクションスタジオであるDungeon Beachの監修カラリストであるジェフ・スウサ(Jeff Sousa)氏が、Metaによる初の実写VRテレビシリーズである「The Faceless Lady」のカラーグレーディングにDaVinci Resolve Studioを使用したと発表した。ロサンゼルスのポストプロダクションスタジオであるLight Sail VRがプロジェクトのホスティングを行い、Blackmagic Cloudを用いて、同氏は8Kステレオの22分におよぶ各エピソードのグレーディングを行いながら、Light Sail VRと共同で作業を行った。

Meta Horizon Worldsで視聴可能な同シリーズは、6人の参加者がアイルランドの古城に集まり、地所の継承権を賭けて一連のゲームで競い合う。しかしすぐに、復讐に燃える幽霊、Faceless Ladyによって敷地内に閉じ込められていることに気づく。二度と外に出られなくなる前に、参加者は何世紀にもわたる謎を解かなければならない。

「グレーディング中、Meta Quest 3ヘッドセットを装着し、ネイティブのP3-D65ガンマ2.2カラースペースでモニタリングしました。監督、撮影監督、プロデューサーもそれぞれQuestヘッドセットを付けて視聴しながら話し合いを重ねました」と同氏は説明する。「本作では、あからさまにならないようにしつつ、不気味な雰囲気を持たせたいと考えていました。プライマリーを用いてシャドウに青/緑を加えましたが、ノードはHDRモードに設定し、拡張された階調を活用して、色分解を強調しました。ゲインは暖かみが出るようにし、ガンマはスキントーンがスキントーンのラインに位置するように調整しました。その後、チャンネルミキサーを使用して、ミッドトーンの輝度を調整して肌が黄色味を帯びるようにしました。」

DaVinci Resolve Studioでグレーディングを実行し、Blackmagic Cloudを活用し、コラボレーティブ・ワークフローに参加することで、同氏はカラリストとしての余裕ができたという。「新しいバージョンのVFXショットが届くたびに再コンフォームして時間を無駄にする代わりに、オンラインエディターが最新バージョンを私のためにタイムラインに配置してくれていました」と同氏。「正直、少し甘やかされていたと思います。VFX部門が、小道具のナイフや動いているショットのコンピューターモニター用のアルファなど、ターゲットを絞ったカラーコレクションを行いやすくするために輝度マットを作成し、Resolveのカラーページのノードツリー内に直接マットを配置してくれました。クリップのフィルターを使用すると、マットが適用されているショットを簡単に見つけられ、血痕の色に深みを持たせるなど必要な作業が行えました。」

同氏によると、ステレオ用にグレーディングする上での最大の難関は、それぞれの目用にPower Windowを複製することだった。「ドッジとバーンで明るさを調整することで違いが生じると、ボケて見えたり、VR酔いを引き起こすこともあります。Resolveのカラーページで専用のノードツリーを作成し、左目で必要となった形状が自動的に右目の同じ場所にコピーされるようにしました。これはほとんどのショットで機能しましたが、奥行きによっては視差をマニュアルで調整しました。また、ノードサイズ調整に搭載されているパンのパラメーターを使用して、左目のアルファマットの右目のコピーを横方向にオフセットしました。その際、ヘッドセットでモニタリングしながら、ステレオの相違がなくなるまで作業を続けました」と同氏は説明する。

「このノードツリーには複合クリップを用いました。このツリーには、ステレオのPower Windowを作成するために、8つの事前定義されたノードのグループが含まれていました」と同氏は続ける。「この複合クリップ自体が、マスターツリーの最初のノードでした。別のクリップからグレードをコピーする際に、『グレードをコピー:指定数ノードを維持』で1を選択することで、そのショット固有のPower Windowが上書きされないので役に立ちました。各ショットをそれぞれの条件でリライトしても、類似したグレードをコピーすることでショットをバランス調整できます。別のショットで作成した特定のPower Windowを再現したい場合、ソースの複合クリップを開いて、『ノードグラフを表示』を選択し、ターゲットのショットの複合クリップのノードに任意の調整をドラッグ&ドロップしました。」

VRのグレーディングにおける別の課題は、マッチングを行う際にギャラリースチルの分割スクリーンを使用できないことだった。「これは、バーチャルディスプレイ・プラグインであるNobe Displayが、Resolveの信号をヘッドセットに送信する方法に起因していて、通常のグレーディングでは並べて比較できますが、それができないため、スキントーンや空などのマッチ作業に困難が伴いました」と同氏。「これに対処するために、複数の再生ヘッドを活用しました。頻繁に利用した手法が、シーンの重要なショットに1つ目の再生ヘッドを配置し、マッチを行っているショットに2つ目の再生ヘッドを置き、マッチの元となるショットに3つ目の再生ヘッドを配置するというものです。これにより、別のショットをすばやく参照でき、目が慣れる前にマッチの作業を行いました。また、これはQuestのヘッドセットを外さずにタイムラインをナビゲートする方法でもありました。」

「Light Sail VRのカラリストとして、過去数年間で、CryptTVとのコラボレーション2作を含む、およそ12のプロジェクトに関わることができ、光栄に思っています。本作は、プロダクションバリューにおいて一流のテレビ番組と肩を並べる初の長編VRドラマなので、関わることができて大変うれしく思っています。また、同じResolveプロジェクトで優秀なアーティストたちと共同で作業できたことが、本作で最も良かったことですね。Resolveでグレーディングを始めてから10年以上になります。同じプロジェクト内で別のユーザーの名前を見つけると、シングルプレイヤーゲームかと思っていたものが、実際はマルチプレイヤーだったことを発見したかのように感じました」と同氏は締めくくった。

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