MetaのVRシリーズ「The Faceless Lady」のコラボレーティブVFXワークフロー、DaVinci Resolve StudioおよびBlackmagic Cloudを使用

  • Blackmagic Design

東京、日本 – 2024年6月6日 (木)

Blackmagic Designはこの日、Light Sail VRが、Metaによる初の実写VRテレビシリーズである「The Faceless Lady」のVFXとオンライン編集にDaVinci Resolve Studioを使用したことを発表した。ポストプロダクションにおけるコラボレーティブ・ワークフローのホスティングにBlackmagic Cloudが使用され、全米各地のVFXアーティストがDaVinci Resolve StudioのFusionページで高度なVFXの作成やクリーンアップを行った。

イーライ・ロス(Eli Roth)氏とCryptTVによりプロデュースされた全6話のこのホラーシリーズは、Meta Horizon Worldsで放送されており、アイルランドの田舎にある、Faceless Ladyが住むキロルク城を舞台としている。3組のカップルが城を訪れ、Faceless Ladyが城に取り憑いていることを知らずに、この古城の継承権を賭けてゲームで競い合うことになる。

Light Sail VRは、ロサンゼルスの制作スタジオで、XRプラットフォーム向けの没入型コンテンツの制作を専門としている。同社のクリエイティブ・ディレクターであるマット・セリア(Matt Celia)氏は語る。「本作は22分の全6話で構成されており、180度のステレオスコピックの没入型映像で納品する必要があったので、簡単なことではありませんでした。また、360ショット以上のVFXを含み、そのうち318ショットは社内で手掛けられ、すべて59.94fpsで8192 x 4096解像度で処理されました。各ショットはノイズ除去、スティッチング、コンフォーミング、色補正、シャープニングを適用する必要がありました。大量のコンテンツをわずか数ヶ月で仕上げなければなりませんでした。」

「短期間で非常に多くのことをこなす必要があったので、一つのアプリケーション内で作業を行い、ワークフローを最適化する必要があることを認識していました。アプリケーション間でコンフォーミングを行うことで時間が失われます。また、魚眼レンズでは間違いを見つけるのは非常に難しいです。VRプレートは60fpsの8Kなので、データ量は膨大です。プレートの書き出しと読み込みでも多くのデータが生成され、時間も要するので、ショートカットを見つけることは極めて重要でした。そういった点で、DaVinci Resolve Studioには大変助けられました」と同氏は続ける。

「Resolveに内蔵されているFusionのおかげで、プロジェクトを構築する上で、チームで協力してVFXショットを作成できました。エピソードごとにマスタータイムラインを作り、ショットに必要な追加のエレメントまたはプレートを重ね、合成されるべき順序で並べました」とVFX主任のスコット・リンチ(Scott Lynch)氏は説明する。「Blackmagic Cloudを使用することで、弊社のVFXアーティストは、そのタイムラインのコピーで作業し、必要に応じてプレートのスタックから簡単にFusionコンポジションを作成できました。VFXアーティストはプレートをタイムコードリストにマニュアルで並べたり、正しいイン点とアウト点を設定する必要はありませんでした。このプロセスにより、効率的に時間を使うことができました。プロセスの管理に費やす時間が減ったため、数百にも及ぶショットを完成させることに集中できました。」

「VFXチーム全員がBlackmagic Cloudを用いてリモートで作業をしていたので、担当者のタイムラインにすばやくアクセスでき、作業の状況を確認できたことで、反復を迅速に行い、問題をより速く解決できました」とリンチ氏は続ける。

セリア氏によると、ほとんどのツールやワークフローは通常の2D用に作られているため、VRメディアの作業には常に課題が伴うという。「幸いにも、FusionはResolveに統合されているため、これらのエフェクトをエディットページで確認できました。これは、アナグリフステレオのチェック、コンバージェンスの調整、ステレオスコピックタイトルの配置において非常に役立ちました」と同氏は語る。

「Fusionで最も気に入っていることの一つが、ノードグループを構築し、.settingsファイルとして保存できることです。このプロジェクトは180度のVRだったので、2つの魚眼レンズを使用し、正距円筒と一対のステレオスコピックにフォーマットしました。これは、ある意味特殊なフォーマットで、360度のステレオスコピック・ビデオと比較して、サポートしているプラグインはあまり多くありません」とリンチ氏は語る。「準備段階で、180度のVRをより一般的なオーバー/アンダー形式の360度フォーマットにすばやく変換し、再び元に戻すための専用ノードグループを複数作成しました。」

「このような小さな工夫により、VFXアーティストが追加で行う必要がある作業を減らし、彼らの仕事を始めやすくしました。フッテージを異なるフォーマットに変換するツール、フッテージのスタビライズに使用できるテンプレート、アナグリフビューアを使用して作業を行いました。Fusionの3Dツールセットを使用して、アニメート可能な羽のマスクを作成したことにより、羽の配置を詳細にコントロールできました。Fusionの柔軟性と速度のおかげで、VFX部門が常にクリエイティブでい続けられました。」

セリア氏は、VR作品における最も一般的なVFXの作業の一つは、照明やレンズなどを塗りつぶすことだと語る。「この作業を行う必要があったのは、視聴者の目を特定の場所に向けたいにもかかわらず、180度のショットを左にわずかに回転させるとレンズが映り込んでしまうショットです。それに対処するために、片方の目を使用して反対側の目を塗りつぶし、立体的に並べるテンプレートを作成しました。合成のセットアップはほとんど終わっていたので、それらのショットのいくつかは.settingファイルですばやく対応でき、わずかな調整だけでシーンに応じて並べることができました。」

第一話のオープニングは、1685年のキロルク城の包囲戦の様子を映し出している。「この戦闘シーンは夜間に撮影され、クレーンに大型の照明を複数設置して、キロルク城とその前で繰り広げられる戦いを照らしました。Fusionで、これらの照明をステレオで塗りつぶしました。クリーンプレートを作成し、Fusionに内蔵された2Dトラッカーを使用してトラッキングしました」とリンチ氏は説明する。

「また、フリントロック式ピストルの発砲を立体でシーンに追加するために、制作中に撮影された銃口の火花のプレートを合成する必要がありました。VRでこのように手の込んだ作業を行う際には、FusionのVRヘッドセット環境設定により、VRヘッドセットで実際に映像を見ながら合成を実行できます。8K解像度ではミスがすぐに分かるので、プレートの配置を極めて正確に行う必要があります。配置の問題があると小さなことでもビューアで分かります。多くの場合、配置が完璧になるまでプレートをサブピクセル単位で移動したり、ワープさせたりしました。ショットをレンダリングする前にDaVinci Resolveでそれが実行できるのは、このようなプロジェクトにとっては非常に重要です」とリンチ氏は続ける。

また同作には、複数のプレートを一緒に合成する必要があるモーションコントロール・ショットもいくつかあった。「これらのショットは、ほとんどのエピソードのコールドオープンに使用され、キロルク城の継承権を賭けたゲームの参加者たちがインタビューで話す内容に基づいて、登場人物の背景を表現しています」と同氏は説明する。「これらのショットは、多くが7,000フレーム以上の長尺で、複雑なスタビライズや、グリッドワープ、スクリーンの置き換え、リライトなどが多数必要で、多くの困難に満ちていました。また、すべて8192 x 4096のステレオスコピック3Dであり、正距円筒図法でした。可能な限り完璧に近づける必要があり、一人のアーティストがショットを約一週間で仕上げなければなりませんでした。」

「弊社のシニアVFXアーティストであるキース・コロド(Keith Kolod)には本当に感謝しています。こういったショットの合成は極めて複雑なので。右目と左目のパスに作業を分割し、アンダーレイや付箋などのFusionに搭載されたツールを使用することで、作業を整理し、簡単に把握できました。セイバーノードを使用して、合成の一部をEXRにレンダリングし、ローダーノードを使用して戻すことで、全体的なレンダリングの時間を削減できました。この種のワークフローは、レイヤーベースの合成プログラムで整理整頓することは不可能だったでしょう」と同氏は締めくくった。

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