ニューノーマル時代におけるハイエンド向けリモートアクセスアプリケーション「Photron Remote Access Gateway」

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ニューノーマル時代におけるハイエンド向けリモートアクセスアプリケーションPhotron Remote Access Gatewa

リモートワークを実現するための製品は従来から存在していたものの、セキュリティ・管理コスト・利便性などの懸念により本格的な導入は進んでいなかった。ところが、2020年3月以降新型コロナ感染症状況下において、様々な業務を三密を避けて行いながら、事業を継続していく必要性に迫られたため、多くの企業が何らかの製品を導入し、何とか事業を継続している状態にある。やむを得ずセキュリティ規則を緩和し、従業員自宅から事業所にリモート接続することを許可する、といった暫定対応を行った事業者も多いのではないだろうか?
株式会社フォトロン(以下、フォトロン)と株式会社 TBSテレビ(以下、TBSテレビ)はコロナ以前より将来のリモートワークの在り方、実現方法について検討を行っていたことから、このような状況下においても安心して効率的にリモートワークを行うことができる「Photron Remote Access Gateway」(以下、本製品)を共同で開発した。本稿では本製品の開発背景、特徴および活用例について紹介する。読者諸氏のリモートワーク設備検討の参考になれば幸甚である。

開発背景

コロナ以前の状況において、リモートワーク設備の本格導入に踏み切った企業は少なく、多くは2020年東京オリンピック期間を想定した最低限の検証・対応にとどまっていたと思われる。本格導入に踏み切ることが難しい理由として、以下の項目が挙げられる。

  • セキュリティに対する懸念
  • 事業者、従業員宅のネットワークインフラ整備不足
  • ネットワーク管理者の機器管理、運用サポート業務増加懸念
  • 上記課題を解決するための設備コスト増

フォトロンは映像制作、編集、CGやアニメ制作、CADによる設計や製図などのプロフェッショナル業務に関する製品開発・システム提案を手掛けており、高性能・高品質のリモート接続についてはTeradici社のPCoIP(PC over IP)テクノロジーを用いた製品を利用することで実現できる所までは検証を行っていた。しかし、実際に顧客に提案を行う際には、リモート接続製品単体ではなく、上記の懸念事項も解決できるソリューションとしての提案が必要となるため、容易には販売できなかった。
新型コロナ感染症の拡大もあり、フォトロンとTBSテレビは、「運用に最低限必要な機能を搭載したリモートワーク支援ツールを短期間で共同開発する」ということで合意した。そして、2020年7月に仕様決定、8月~10月の3か月でver.1開発を行った。

製品コンセプト

製品ver.1は下記の製品戦略・コンセプトのもとに設計・開発を実施した。

(1)VPN利用を前提

スピーディーに開発を行うためには、セキュリティの懸念を独自に解決するアプローチは採用すべきでないと判断し、各顧客が従来から利用しているVPNをそのまま利用する方針とした。セキュリティ対策機器購入やVPN接続アプリ利用方法について従業員教育を行う必要もない。

(2)既存設備の活用

既存設備をそのまま活用し、クライアントPCも一般的なレベルのビジネスPCで対応できるようにすることで早期導入を可能にする。本製品導入を管理サーバー1台の追加のみで実現し、既存機器の買い替え、データセンターへの移設、クラウドサービス契約といった設備投資不要のシステム設計とする。

(3)Teradici社のPCoIP製品利用

Teradici社のPCoIP製品を利用することで、リモート接続そのものの信頼担保および性能向上を実現する。具体的には、下記の項目について競合製品と比べても同等またはそれ以上のパフォーマンスが得られる。

  • 独自アルゴリズムによる通信暗号化
  • 低遅延(操作レスポンスが高い)
  • 色・線の再現性が高い
  • 画面転送のフレームレートが高い
  • 通信帯域の上限設定が可能
  • 音声品質が高く、ステレオ音声での伝送が可能

また、Teradici社とは開発パートナー契約を締結することでSDK/API によるTeradici社製品の制御が可能となり、後述の自社開発管理システムとの連携を実現。

(4)管理システムの自社開発

リモートワーク支援ツールを実務で利用していただくためには、リモート接続の実現だけでなく、運用に関わる管理担当者の業務負荷軽減や機器管理/アクセス制限機能なども必須要件となる。そこで、TBSテレビの現場運用ノウハウやニーズを仕様に反映させることで、多くの顧客に本格導入していただける製品を目指す。

(5)必要最低限の機能で早期リリース

リモートワーク自体はどのような業界でも必要とされるものである。Ver.1ではまずリモートワークの実現に必要最低限の機能を搭載することに集中し、早期リリースを目指す。機能追加や映像制作に特化した製品ラインナップなどの開発は次期バージョンで実施することとした。

(6)シンプルで直感的なインターフェース

本製品は不特定多数に利用されることを考慮し、Webブラウザで動作するシンプルなユーザーインターフェースを入口とした。また、管理者の運用業務においても多数のユーザーを登録・管理することが容易なように配慮した。

製品特徴

事前に、リモート接続先のPCおよび、リモート接続を行うクライアントPCにはアプリケーションをインストールしておく。
以下、本製品の機能について簡単に説明する。
管理者やユーザーはまず事業者側で用意したVPNに接続し、本製品の管理サーバーURLにアクセスし、ログインする。

ログイン画面

(1)ホスト登録(管理者機能)

リモート接続先となるPCをホストと呼ぶ。
下記のように登録されているホスト一覧を確認でき、ホストの追加・削除ができる。

ホスト管理画面

ホスト管理画面

(2)ユーザー登録(管理者機能)

ユーザーを登録し、ユーザー権限を下記3種から選択することができる。

  • 管理者
  • パワーユーザー
  • 一般ユーザー

パワーユーザーは基本的には一般ユーザーと同じであるが、「他のユーザーが接続中のホストに対して、強制的に接続を奪うことができる(接続したまま離席してしまい、他のユーザーが利用できない事態に対処)」という点で異なる。

ユーザー管理画面

ユーザー管理画面

(3)グループ登録(管理者限定)

グループを作成・編集することができる。グループを作成し、登録済みのホストおよびユーザーをグループに割り当てることにより、ユーザーのホスト接続許可を制御することができる。
例えば、グループAに割り当てられたユーザーは、グループAに割り当てられたすべてのホストに接続が可能である。ホスト、ユーザーともに複数のグループに割り当てることが可能であり、このグループ登録の仕組みにより機器とユーザーの管理を行う。

(4)ホスト接続

一般ユーザーおよびパワーユーザーが本製品の管理サーバーにログインすると、アクセス権が付与されたホスト機が一覧表示される。一覧からホスト機の利用状況を確認し、利用したいホストを選択して「接続」ボタンを押せばリモート接続される、という非常にシンプルな利用方法になっている。

ホスト一覧画面

ホスト一覧画面

製品活用例

リモート接続製品を単体で導入するのではなく、本製品を活用して機器やユーザーの一元管理も同時に実現することで、下記のような導入メリットがある。

(1)映像制作・設計業務などのテレワーク対応

特に映像制作や設計など高性能のワークステーションを共有したり、テレワークで利用したりできるようになる。従来のリモート接続製品では、

  • マウス操作や表示などが高レスポンスである
  • 図形や線分がボケずに表示される
  • 色の再現性がよい
  • 動画再生がスムーズで画質劣化が少ない

といった性能面でリモート接続利用が難しかったが、Teradici社製のPCoIP技術を活用することで、高品質なリモート接続を提供可能である。
また、WACOM社製タブレットにも対応しているため、作画などにも利用できる。

(2)事業所をまたいだ機器の共有

顧客側で事業所をまたいだVPN接続が実現されていれば、すべての機器が一覧から簡単に選択・接続することができるようになる。
既存機器を設置場所に関係なく有効活用でき、新規機器購入の際にも事業所ごとに設置することが不要となるため大幅なコストダウンを実現可能である。

(3)オフィスの省スペース化・運用効率化

ワークステーションのような大型の機器を集約し、リモート接続で利用することにより、オフィスの省スペース化を実現できる。単一事業所内だけの最適配置ではなく、郊外の事業所に機器を集約して都心オフィスの機器を最小化するといった全体最適化が可能である。また、空調や機器メンテナンスなども効率化できる。
オフィスの省スペース化や三密回避という視点では、下記のような活用方法も考えられる。
  • オフィスのデスクはモニタ、キーボード、マウスおよびミニPCのみを配置した自由席とし、リモート接続により必要な機器を使う。テレワークだけでなく、出社業務でも日常的にリモート接続を活用する所がポイント。
  • 本製品をソフトウェアKVMとして利用することで、編集室とサーバールーム間などの配線をLANケーブルに置き換えスリム化。高価なKVM機器導入も不要になる。

今後の開発

Photron Remote Access Gatewayのver.1は最低限の機能で開発を実施したが、現場業務におけるニーズに応えるために、今後下記機能をはじめとしたバージョンアップを計画している。

  • 1:Nリモート接続(1つのPCに複数人が接続)
  • 音声通話機能のインテグレーション
  • スケジュール機能(設備予約)
  • Googleカレンダーなどとの連携
  • 管理サーバーのクラウド対応
  • パブリックネットワーク接続対応(VPN接続なし)

また、より多くの方々のご要望を反映させるために、次期バージョン仕様策定にご協力いただける方も募集中である。ご興味ある方は是非ご連絡いただきたい。

製品情報

Photron Remote Access Gateway

Photron Remote Access Gateway

ハイエンド向けリモートアクセスアプリケーション

簡単な操作で自宅などの遠隔地から会社のワークステーションにリモートアクセスできるアプリケーションです。

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月刊「放送技術」3月号掲載記事より

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