IPリモートライブプロダクション・クラウドサービスのご提案

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IPリモートライブプロダクション・クラウドサービスのご提案

目次

近年、社会的なネットワークインフラ環境がより高帯域なものに対応できるよう整備が進むにつれ、それらをIPリモートプロダクションに活用するための製品やサービスが増えている。ただしライブプロダクションにそのIP活用を検討すると、高画質な映像を伝送するための高帯域の確保、オペレーションのストレス軽減とアウトプットのクオリティに直結する低遅延の実現が重要なポイントとなる。
同時に、比較対象となる従来のオンプレライブプロダクション(スタジオ、中継車など)に対してコスト面で優位になる点も重要となる。

これらのポイントをすべてクリアし、IPライブプロダクションワークフローを包括的に1メーカー、1システムで統一することは難しい。フォトロンでは、様々な国内外のテクノロジーを統合したIPライブプロダクションの実現を目指しており、現在取り組んでいる当社取扱いの各社製品とサービス、またそれらを統合するための新しいクラウドサービスを紹介したい。

EVS リモート スローリプレイ/ハイライトプロダクション

EVS社が提供するXTシリーズのサーバは、国内でも導入いただいているユーザも多く、主にスポーツライブプロダクションでのスローリプレイおよびハイライト制作で活躍している。最新の「XT-VIA」サーバと昨年リリースした 「LSM-VIA(XT-VIA リモートコントローラ)」でリモートプロダクションを実現する。
「XT-VIA」サーバは ST2110をベースとしたIPストリームのダイレクトインプット/アウトプットにも対応しているが、今回はリモートオペレーションのスタイルに焦点を当てた紹介とする。

「LSM-VIA」は、EVSサーバの制御をIPプロトコルに置き換えることで拠点間での制御を可能とした。従来の操作感を実現するためにまだ発展中だが、中継現場に行かずにオペレーションできる体制は将来的な制作スタイルにも寄与できる利点は多いと考える。制御スタイルの変更だけでなく、よりグラフィカルなUIでオペレーションを簡易にするレイアウトや、1ボタンでEVSサーバだけでなくその他関連システムの外部制御を行えるマクロボタンを多数実装することで、オペレータの表現自由度を拡張する。

現時点ではまだ制御のリモート化のみの対応になっているため、オペレータに提供するマルチビューワの映像は別の方法で伝送する必要がある。これは後述する低遅延映像伝送サービス「PHOTRON Live Cloud Service」を活用することでEVSオペレーションをバックアップする。

図1. [XTVIA] – [LSM-VIA] リモートオペレーション

EVS X-ONE リモートライブプロダクション

同じくEVS社から提供している「X-ONE」は、スマートプロダクションの実現を目指しており、この延長線上でのリモプロをサポートしている。スマートプロダクションとはGPUでの映像処理やIPストリーム入力(NDIでのグラフィックストリーム対応)、オペレーションのマクロ化などをITベースのエンジンで実施することで、X-ONEはこれらを2Uのワークステーションで実現するオールインワンプロダクションシステムとして提案する。
1つのシステムで、スローリプレイ/ハイライト制作だけでなく、ライブスイッチングやCGオペレーション/合成、簡易オーディオミキシング、タリー出力など必要最低限な機能を網羅する。カメラ入力数の制限から小・中規模のプロダクションをターゲットとしているが、コストを抑えた中継コンテンツ制作をサポートする。

「X-ONE」は、サーバ(映像処理を行うメインエンジン) とクライアント(オペレーションを行う端末)に役割を分けることができ、リモートプロダクションにはそれぞれを別拠点に設置することでリモートオペレーションに対応する。

図2.X-ONE リモートプロダクション

Singular.Live クラウド・CGライブプロダクション

ライブプロダクションにはCG/テロップが必ず必要となる。通常は描画エンジンをハイスペックなワークステーションに搭載し、これらをオンプレミスでシステムアップする必要がある。バーチャルシステムやカメラ連動、最近のトレンドであるAR/XRなど高レベルな技術を演出に求める場合には、このオンプレCGシステムが必須となるが、よりシンプルな表現で良い場合にはSingularが活用できる。

Singularとは、Singular.Live社が提供するCGクラウドサービスの名称である。グラフィックエンジンをクラウド環境上に構築しており、ブラウザで制御したCGコンテンツはHTMLで描画される。

Singularはデザインを開発する環境、制御UIツール(標準アプリの提供と、ユーザごとのオリジナル開発が可能な環境)の提供をすべてサービスとして行っている。HTMLのアプトプットはこのまま各クラウドサービスで映像ストリームと合成してデジタルプラットフォームに配信することも可能である。これ以外にもSingular.Live社が提供しているアプリケーションを使用することで、NDIとして既設プロダクション環境に提供することもできるし、Blackmagic Design社のデコードボックスと組み合わせることでSDIとして出力することもできる。

Singularの最大のメリットは、制作/送出する上でPC1台とインターネット環境があれば完結すること、かつ月額固定でのサービス提供であること、となる。
提供価格は従来のプロ映像向けシステムと比較するとかなり低価格で設定されており、クラウドサービスとしての恩恵を最も受けられると考える。

構築の特性上、リモートでのCGオペレーションも容易に実現できる。インターネット環境とPCのブラウザ操作だけで実現できるワークフローは魅力的であり、操作に必要なガイドとなる現地映像は、後述する「Photron Live Cloud Service」で低遅延な映像をオペレータ環境まで伝送、提供する。

図3. Singular リモートCGプロダクション

Haivision SRT 高品質映像伝送

Haivision社は SRT(Secure Reliable Transport)と呼ばれるIPプロトコルを立上げ、オープンプロトコルとしてアライアンスメンバーと共に普及に尽力しているテクノロジーベンダーである。

代名詞ともなるSRTはパブリックインターネット環境での利用をベースに仕様が検討されている。TCPベースではどうしても解消できない遅延の問題をUDPベースに置き換えつつ ARQ(パケット再送信要求)を実装することで、パブリックなネットワーク環境で発生したパケットロスをフォローする仕組みを構築している。また、SRTで伝送する際に AES128/256 といった高度な暗号化を施すことで、デコードキー(PassPhrase)無しでは映像を復元できないセキュリティ面での対応も行っている。

このSRTに対応しつつ、次世代コーデックとしてHD/UHDを包括的にサポートできる HEVC も採用している。これらに対応したSDIとの変換を行うエンコーダ、デコーダも多くのラインナップを揃えているが、最新の HD4ch, UHD1ch に対応している「Makito X4」や超コンパクトサイズである HD1ch対応の「Makito X1 Rugged」タイプは省スペース、高集積という点がメリットとなっている。

図4. Haivision X4, X1 Rugged モデル

またHaivisionではこれらSRTを利用したリモートプロダクションにも力を入れており、海外では、eSportsの大型イベントにおいて、複数のUHDカメラ映像を遠隔地にあるスタジオまで伝送しリモプロをおこなった事例もある。

紹介したとおり、パブリックインターネット回線を利用してSRTでのIPストリームを拠点間伝送するだけではなく、オリジナルの MultiChannel Sync の機能も持つ。これは複数のストリーム、エンコーダ間で伝送したSRTストリームをデコードする際に、それぞれのフレーム同期をとって出力するものである。
リモートプロダクションでは、後段でのライブスイッチングのためにフレーム同期を合わせることは必須であり、映像伝送のフローの中だけでこれが達成できるのはシステム構成の上で大きなメリットとなる。

他にもSRTストリームをマトリックスルータのように使用できる「SRT Gateway」や、Haivision社がクラウドサービスとして映像伝送プラットフォームを提供する「Haivision Hub」なども用意しており、国内だけでなく海外伝送の際にも伝送帯域を確保したSRT送受信にも対応している。

Photron Live Cloud Service (フォトロンLCS)

フォトロンLCSは現在リモートプレビュー用途としてSRTを利用した遠隔地での映像プレビューサービスとして提供している。このサービスをよりライブプロダクション向けに拡張し展開することを予定している。

ライブプロダクション用途において、映像伝送に求めるものは大きく、[放送品質伝送] と [低遅延伝送] にあると理解している。どちらも達成できれば問題ないのだが、必要とするコストも勘案した上で現実的な構築をするためにはそれぞれで異なるテクノロジーを用いて、場面に最適なソリューションを提供する必要がある。そこでこれらのリクエストを実現するためにフォトロンで展開するのがLCSである。

主な提供機能/サービス

  • SRTを利用した高品質映像伝送(クラウドルーティング機能含)
  • 管理者画面でのブラウザプレビュー(ステータスモニタリング)
  • SRT伝送時のクラウド収録
  • WebRTCを活用したモニタリング用超低遅延伝送
  • ブラウザ、モバイルデバイスプレビュー

シンプルな映像伝送以外にも、リモプロでの補助サービスとして(前述した MultiChannel Sync でのフレーム同期にも対応)、低遅延映像のプレビューを活用したEVSリモートオペレーションや、リモートCGプロダクションのプレビューツール、実況解説者にリアルタイムに近い映像を届けることでオフチューブのリモート化などにも寄与できるのではと考えている。

LCS内でリモプロを完結させるために必要な要素としてインカムなどのオーディオコミュニケーションや、カメラタリー伝送などの機能の対応も課題となっており将来的な実装に向けて調査と検証を進めている。

図5. Photron LCS サービス概念図

Viz Vectar Plus

バーチャルグラフィックシステムというイメージが強いVizrt社だが、IPライブプロダクションに向けたクラウドライブスイッチャーとなる「Viz Vectar Plus」の提供を開始する。

従来のオンプレプロダクションスイッチャとしての機能をクラウド上で実現し、専用のハードウェアコントロールパネルも利用可能である。
NDIベースのシステムであるが他にSRT入出力等もサポートしており、公衆回線を利用した低遅延ライブビデオの伝送を容易に実施可能である。

最大規模で構築すると、44x IPビデオインプット、25x IPアウトプット、 8 M/Eで4xキーヤーを実現し、マルチビューワやメディアプレーヤーまでも実装している。

ソフトウェアで実装されたスイッチャーであるため、遠隔地にある多拠点からの様々なソースの映像信号を扱うことができる。またオンプレにゲートウェイを設置することで、SDIやHDMIなど従来の映像信号を扱うこともできる。ライセンス形態は月額課金モデルを採用しており、現場のニーズに柔軟に対応できる点も、オンプレと比べた場合の優位点であろう。

図6. Viz Vectar Plus 構成イメージ

DAZZL クラウドライブプロダクション

最後にDAZZLライブクラウドサービスを紹介したい。これはライブスイッチング、CGオペレーション、VTR再生など、ライブプロダクションに必要な機能をすべてクラウド上に設置、サービスとして提供しようとしている制作スイートである。

ISOとしてのカメラ映像はIPストリームでクラウド上に集約させ、そこからスイッチングなどのオペレーションをブラウザベースで行う。操作感についてはオンプレシステムと比較するとまだ改善の余地があると感じるが、主には配信コンテンツ用途として、低コストでの制作を実施するという点では優位である。

DAZZL社が提供しているフリーのアプリケーションを使用すればスマートフォンなどをカメラデバイスとして使用することもできるので、このような特別なカメラやドローンなどの映像を組み合わせながら、DAZZLならではの映像制作が行えることもポイントとなる。海外では、有線カメラの設置が難しいマラソンやトライアスロンなどのコンテンツをデジタルプラットフォーム向けの配信システムとして運用が進んでいる。またAIカメラなどと組み合わせることで現地での制作リソースをできるだけ減らした運用にも多くの事例から挑戦しているように感じられる。

Singularなどその他CGサービスとの相性も良く、将来に向けポテンシャルを感じるサービスである。

まとめ

ご紹介した製品とサービス以外にもフォトロンではST2110,2022 などのSDIからIPベースの映像制作への挑戦や、JPEG-XS などの次世代圧縮技術の採用や提案も視野に活動を続けている。

コロナ禍の環境が促進したリモートプロダクションも、コンテンツ制作全体のワークフローを見ると、規模に応じた様々な選択肢が必要になってきていると感じる。

フォトロンでは規模の大小に関わらず最適なシステムの提供を目指し、お客様とのコミュニケーションから共に課題を解決できるパートナーになりたいと考えている。


※月刊「放送技術」2021年5月号寄稿文より

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