デジタル製造ソリューション | フォトロン 米沢工場 実践レポート

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2021.04.01
デジタルセル生産における画像外観検査(AZVision)
多品種生産における検査課題
フォトロン米沢工場では、画像計測・工業用ハイスピードカメラを製造し、国内のみならず世界各国へ出荷している。お客様の多様なニーズに応える為ハイスピードカメラも多様化しており、多品種生産に適したセル生産方式による製造を行っているが、セル生産では1人がこなす作業メニューが多く、作業標準を徹底する仕組みや確実な部材供給、情報伝達の仕組みが欠かせない。
現在はデジタルピッキング、デジタル屋台などITを駆使した生産システムを構築しているが、さらなる生産性向上と品質保証体制のレベルアップを図りたいと考えていた。
特に外観検査工程は目視検査が多く、見逃し防止や検査データ取得の自動化に関心が高かったが、過去に検討した画像検査システムでは段取りに要する工数に対し検査数が割に合わず具体化していなかった。
そんな折、新型の画像外観検査装置“AZVision”に関する実証評価の機会を得た。判定性能や使い勝手と併せて実作業における検査時間短縮効果についてテストを行った。


所定の条件を満たさないと次の工程へ進めない仕組み。
検査項目の検討
テストは弊社主力製品 FASTCAM Mini のユニット基板Aに対する外観検査で「プロテクトシールの貼付確認」「コネクタの挿入確認」 2項目計6工程を、画像検査に置き換え2工程へ集約するプランとした。
これは、寸法測定が不要な事とプロテクトシールが面上に複数個所貼付される確認要件がAZVisionの「カメラ視野内の任意の個所を一度に複数判定できる」メリットに上手く適合すると考えたからである。

検査設定について品質技術グループの佐藤曰く「以前にXYステージ移動型の画像検査システムを検討したことがあるものの、キャリブレーションやプログラミング設定に時間がかかることから見送った経緯があるが、AZVisionのメッシュマッチング設定は勘所を理解してしまえば思う様にセッティングできる」という評価であった。

懸念事項は、「コネクタの挿入」を適切に判定できるかであった。該当箇所のコネクタは不確実な挿入では浮く傾向にあるが、2D検査装置のAZVisionは高さ方向の検知はできない。コネクタが全く挿入されていない状態は見た目にも違いが明らかであるが、僅かに浮いている程度は画像の違いとして捉えられないのではという予見からである。

評価結果
【結果】
検査時間(実際のジャッジ時間合計 ※ワークのセット時間は除く)目視:30秒 → AZVision:5秒
検査時間については上記の通り短縮の効果が見られた。
懸念していたコネクタの挿入判定は「色差」判定が有効であった。遠近の差からコネクタのエッジを捉えるメッシュが正常では基板色の「緑」であるのに対して、不良ではコネクタ色の「白」になった。該当箇所が非常に細かい為、1,800万画素カメラを使用しメッシュを細かく設定。レンズも焦点距離の長いレンズに変更しカメラの高画素化と撮影倍率の変更を行った。尚、プロテクトシールの有無は見た目にも明らかであり問題なく判定することが出来た。今回のテストでは簡易的な治具でワークを固定したが、アライメント補正機能も有効であった。


検査設定については、座標設定や部品ライブラリの設定が不要なことで扱いやすさを実感できた。
一方で検査の都度、ワークを作業台からAZVisionへ移し変える手間がかかるのは課題である。
今後の取組み
テストを通じて部分的ではあるが目視検査を画像検査システムに代替する効果を検証することが出来た。
搬送時間を削減する工夫が必要なのは上述の通りであり、カメラの設置個所や架台製作を検討する必要がある。
デジタルセル生産システムと画像検査システムAZVisionを連携させ、より進化したデジタル製造システムの構築に向けて引き続き活動していく。
